エニアグラムの歴史について考える~グルジエフ編~
前回はエニアグラムの歴史について古代から見てみました。
今回はその続き。古代からの伝統的知恵がどうなって現代のエニアグラムにつながったのか。
またもや
『エニアグラムーあなたを知る9つのタイプ(基礎編)』
ドン・リチャードリソ&ラス・ハドソン
という本から学んでみます。
前回はエニアグラムの正確な起源は歴史上は不明ではあるけれど、紀元前2500年ころのバビロンにあると言われていると学びました。
その後の流れはどうなっていったのでしょう。
現代の世界にエニアグラムの図をもたらしたのは、ゲオルギー・イワノッヴィッチ・グルジエフ(1875年ころの生まれ、ギリシャ系アルメニア人)と言われています。
グルジエフは、若いころから数秘の知に興味を持ち、古代人によって開発された「魂を変容する」という完全な科学が、失われてしまっていることを確信していたそうです。
人間の変容についての、失われた古代の科学を回復しようと、情熱を持ち少数の友人たちと世界中の古代の知恵の伝統を集めはじめました。
長年旅をしながら仲間と共に古代の知恵の伝統を学び続け、第一次世界大戦の直前頃に長年の探求を終え、ペテルスブルグとモスクワで聴衆に教え始めました。
グルジエフが教えたのは心理学的タイプ論ではなく、主に「自然のプロセス・モデル」としてのエニアグラムだったそうです。
学ぶ人たちが、宇宙における自らの位置と、人生における目的を理解する助けとなることをねらいとし、自分の哲学の中でエニアグラムはもっとも重要で中心的なシンボルであると教えました。
グルジエフの考えによると、エニアグラムの図はあらゆる存在を司る3つの聖なる法則を表す、3つの部分からなるといいます。
【最初の法則:円】
円は普遍的シンボルである
一体性・全体性・調和をさす
「神はひとつなり」という考えを象徴(主にユダヤ教・キリスト教・イスラム教の特徴)
【2つ目の法則:三角形】
ほぼすべての世界的宗教が、宇宙は二元論ではなく三要素の表れであると教えている
キリスト教:父と子と精霊という三位一体
ユダヤ教(カバラ):神ははじめ宇宙において。3つの「球」である「ケテル」「ビナー」「コクマ」として現れると教えている
仏教:仏・法・僧
道教:天・地・人
など
古代の伝統では、男女→男・女・子、白黒→白・黒・灰色ととらえるそうです。
グルジエフはこの現象を「三の法則」と呼び、
存在するものはすべて、三つの力の相互作用の結果であると述べています。
【3つ目の法則:変六角形】
1-4-2-8-5-7の順を追う図形の部分のこと
グルジエフが「七の法則」と呼んだものを象徴している
何も留まるものはなく、あらゆるものが動き、別のものになっていくということ。
この世に存在するものはすべて岩や星ですら変化します。
あらゆるものは、変化し、再生し、進化あるいは退化していきます。
こうした3つの要素「円」「三角形」「変六角形」をひとつにするとエニアグラムの図ができます。
ものごとの全体性(円)、3つの力(三角形)の相互作用、そして時間の経過における進展や変化(変六角形)を表すシンボルになっています。
グルジエフは「神聖舞踏」を通じてエニアグラムを教えましたが、静止した図形ではなく、ダイナミックに動く「生きたシンボル」として考えるべきだと説明したそうです。
ただし、グルジエフや弟子が書いた出版物のどこにも性格タイプとしてのエニアグラムを教えた記述は残っていません。
性格タイプとしてのエニアグラムの起源はより最近であり、2つの主な流れに根差しているそうです。
その2つの流れについてはまたの機会に。
今回グルジエフの考えたエニアグラムに一部分ではありますが触れていきました。
この一部を知っただけでもエニアグラムの神髄というか、どれだけ奥深いものなのかが伝わってきました。
こういう根底にある意味付けを知っているとエニアグラムの学びにも深みが増し、より理解が深まる気がします。
エニアグラムは単なる性格判断としてのものにはとどまらない、もっともっと人生をよりよく生きていくためのツールとして使うことができるのではないかと確信しました。
人類普遍の知恵の凝縮であるエニアグラムを利用しない手はありませんね。